今日の映画。新海誠『秒速5センチメートル』

新海誠秒速5センチメートル』。

私は新海監督の作品が好きで、『彼女の猫』以来、すべてを見てきた。今回は『猫』以来の日常をモチーフにした作品である。

さて、感想を書かねば、と思ってこの日記を書き始めたわけだが、肯定的な感想と否定的な感想が入り混じり、なんとも複雑な心境である。

正直言おう。


    新海誠山崎まさよしに負けたんじゃないのか?



MusicDramaというジャンルがある。
元になる音楽の歌詞・曲調に合わせて、俳優を起用し、シナリオを起こし、ドラマを作成する手法だ。PVでもよく使われる手法であり、特にK-Popなどは1時間近いものまである。「MusicDramaという手法がある」から、ということは、彼の作品への評価としてふさわしくないのはわかっている。わかっているが敢えて書く。



    これは映画ではないんじゃないのか?
    これはMusicDramaじゃないのか?



作品そのものの良し悪しは別として、初めから「歌」ありきでそれにイマジネーションを受けて映像を作っていれば、やはりそれは映画ではなくMusicDramaと呼ぶ別ジャンルの作品ではないか?隣国ではMusicDramaを映画館で公開するパターンも多い。すばらしい作品も多い。金とって見せるのもまずくはないだろう。


    だが、映画か?本当にこの作品は映画なのか?


それぐらい、この作品は山崎まさよしの「One more time, One more chance」の影響が強い。監督はインタビュー等で、お話にあわせてこの歌を選んだというが、この歌なしで、この構成での『秒速5センチメートル』は成立しないだろう。それはいい。ストーリーがすばらしく、歌が「主題歌」としてのポジションで収まっていれば。

…私は新海誠には山崎まさよしに勝って欲しかった。このジャンケンは相当な後出しジャンケンで、新海誠の才能からすれば勝って当然。そう思っていた。でもいま、そうは思えない。つまり、いいたいことはなにかというと、



    新海誠山崎まさよしに負けたんじゃないのか?



直截的にいえば、この作品の場合、歌と作品の立場が逆転してしまっているのではないか?、と。見終えてからそんな感想がずっとつきまとう。


    敢えてそうしたのか?


    戦って負けたのか?


    それは私にはわからないが…。



この作品は大変すばらしかった。主人公達の心の動きのトレース、鮮明な描写、映画としてみても素晴らしいものだと思う。世の中にある映画のほとんどがこのレベルにまで達しない作品だから。そして私は今でも新海監督のファンである。それはこれからもずっと変わりないだろう。

映画だ、MusicDramaだ、なんて本質的な問題ではないんだろう。それもその通りだと思う。でも、この感想は書きたかった。書きたかったんだ。


もしこの文章を読んだ人がいて、ご不快になられた方がいらっしゃったら申し訳ない。また、この文章が彼への悪口と思われませんように…。

参考URL:http://5cm.yahoo.co.jp/interview/index.html